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January 10, 2005

「頑張る」

鬱病のひとに対して、「頑張って」という言葉を掛けてはいけないらしい。

うつ病とは決して「なまけ病」などではなく、「(生真面目で几帳面な人などが)頑張り過ぎた結果起こる病」であって、そういう人物に対して「頑張れ」と言うことは、頑張れないことをさらに自責させる逆効果に結びつくからである。
さすれば、「一億総うつ状態」とも言える昨今の状況では、不用意に「頑張って」という言葉など使おうものなら、もう、言葉狩りアカ狩り金縛りに陥ってしまうこと請け合いなわけで。。

・・・しかし、さきの大戦と戦後のどさくさを生き抜いてきたうちのお袋に、こんな理屈は通じない。
腹をこわしたら正露丸、頭痛発熱はバファリン、という純粋想起の如く、彼女にとっての励ましワードは「頑張れ」一本。思えば僕は、このボキャブラリー貧弱な母親のお陰もあって、小さい頃から如何なるときにも「頑張りなさい」以外の励まし言葉を掛けられた覚えがない。お陰様で、人並み外れた鈍感さも手伝って、いまのところは鬱にならずに済んでますが、ほんと、毎日毎日、一年365日、「頑張れ」って僕は言われ続けてきました。自分としては、それなりに頑張ってるんだけどなあ・・・とか思いつつ。

ふと、辞書で調べてみると。
*****
「頑張る」(三省堂「大辞林」より)
<「(我)には(張)る」の音変化、また「眼張る」の意からとも。「頑張る」は当て字>
 1 困難にめげないで我慢してやり抜く。
 2 自分の考え・意志をどこまでも通そうとする。我(が)を張る。
 3 ある場所を占めて動かないでいる。
*****
のようになっているそうな。

「頑張る」という言葉は、英語で言う「persevere(severeな状況にper(貫徹・耐久)する)」に近しいのかな。
うちのお袋のことを度々持ち出すが、戦中戦後を経験している人間にとっては、いま僕らが体験している会社や学校などのストレス自体も大したものには映らないのだろう。「如何な困難も、あのときの苦しさに比べれば大したものではない」という理屈はまあ、分かる。
・・・けど残念ながら、僕には「頑張る」の言葉が持つ魔法はもう、解けてしまったようだ。

最近、友人から、「そういうときにはいい言葉があるだす」と教わった。
                
                “Take it Easy”

なるほど。伝説のウッドストック。その夢かなわぬことを知った1970年代の米国を包み込んだイーグルスの名曲のタイトルもこれだなあ・・・。
先日、ウッドストックのドキュメンタリー映画を見たが、ジミ・ヘンドリクスの米国歌、ジャニス・ジョプリンの命を絞って歌うカリスマに、やられっぱなしだった。1960年代の最後の泡沫、そして、時代の夢が破れた後のメッセージが「気楽にやろうぜ」であるのは、考えてみれば日本の反戦フォークからニューミュージックまでの流れとも呼応するなあ、なんてオンガク素人ながらも感じる。おっと、だいぶん話がそれてしまった。

「頑張る」に対するカウンターワードとして、僕は“Take it Easy”にはひとを励ます力が未だ残存していると思う。古くて新しいこの言葉の魔法は、まだ解けていない。“Take it Easy!”

けれども、正直なところ、言葉そのものに何処までの意味と力があるっていうんだろう?

ある時宜に適い、ある意図を以って発した言葉は、仮にそれが「石鹸」であっても、「青空」であっても、何であってもいい。それが言葉を介在にした人間間で、強度を持って投げ合えることを確認できたならば、それは力のある言葉ということになるのではないだろうか。
“You say Good-bye” and “I say Hello”・・・ジョンとポールは互いにすれ違う。けれど、同時に二人は認め合っている(だから接続語は"but"でなくて"and"なのだろう、と勝手に解釈しているが)。
「Good-bye」と「Hello」と。これほどシンプルでも強度ある言葉を投げ合えた二人は凄い。

時代が「頑張る」ことを認めようとそうでなかろうと関係ない。
ただ、今、目の前に起きている状況に、そして自分が思い入れている誰かに対して、何かしら投げられる言葉があるならば、それが「オムライス」でも「カニサラダ」でも構わないから、届いて欲しいと思う。

・・・頑張る。

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Comments

鬱の人に「頑張れ」はキツイってのはよく聞く話しで、実際そうなんだろうなぁと思います。
 でも、何人かいる鬱の友達に、ついつい「頑張れよ」って言葉を、自覚しながらも、ほかに言いようがなくって、使ってしまうケースも多いです。一番使いやすいっていうか安易な言葉なんでしょうね。
 Take it Easyも日本語で「気楽にやろうぜ、気楽にやれよ」って言うと、無責任に言ってる感じがして(っていうか、そう受け取られるのがいや、つまり心底相手を考えてるってよりは、自分がどう思われてるかって偽善なんだろうけど)
 結局、あたりさわりのない「頑張れ」を使っちゃうっていう。
 良くないですね。確かに「頑張れ」以外なら、どんな言葉でも、言葉じゃなくてもいいのかもしれないですね。

Posted by: 盥アットマーク | January 11, 2005 at 09:14 PM

きょうとーっても響く話を聞きました。「大抵の人はこれは○○。だけどあれは△△。って具合に互いに異なったり相反する事象をBUTでつないで考えるけれど、そこをあえてANDでつないでみて、とりあえずそれらを同時に抱え持つ試みをしてみたらどう?」というものでありました。ビートルズのお話、ちょうどその感覚と呼応するように思います。
「頑張らない」を標語として掲げるワタクシとしましては、他人様から見えない部分で「頑張る」ときもあるのですが、なかなか自分ではそれを言えないなぁ~。「頑張る」と言える方々をちょっと気恥ずかしいような羨ましいような気分で遠くから眺めております。
で、、、「オムライス」食べたくなったんですけど~(笑)

Posted by: たま | January 11, 2005 at 10:45 PM

がんばらなきゃ、と常に思っています。それはやっぱり病気だからかなぁ・・・
ホントにしんどいとき、「オムライス」って声かけてもらえたらうれしいかも(w
がんばれって言われると、「今の自分じゃダメなんだ、もっとがんばらなきゃいけないんだ」って思っちゃうんですよね。まあ、言われなくても今の自分じゃダメだって常々思ってるんですが・・・
言葉って難しい。しょせん想いの代用品でしかないんだな、ってつくづく思う。でも言葉はすごい。それだけで相手を勇気づけられたりもする。
なんでも、使い方ひとつなんだな。

Posted by: akari | January 12, 2005 at 09:13 AM

◆盥アットマークさま

僕にも鬱の知人が居ますが、つい自分に言う感覚と同様に「頑張って!」を口にしてしまう時があります。トランプでいうとジョーカーみたいなものなんですかね・・・。
>言葉じゃなくてもいいのかもしれないですね
目指すはハイコンテクストな関係ですかね。。


◆たまさま

BUTとANDですか。中学校で習う最もシンプルな英単語ですが、奥深いですよね・・・。
相反する事象どうしをANDで考える。心理的には簡単には超えられない壁もありますが、そういう試みを敢えて考えるのは面白いと思いました。
また色々教えてくださいませ。オムライス!


◆akariさま
自分を追い込まないようにするのも、ある種の技術が要るのでしょうね。少なくとも、「常に思う」状態って、ひどく息苦しいんじゃないかな、などと拝察いたします。。
誰しも抱えることだからこそ、他人を見れば自分の余裕が作れるかもね。。オムライス!

Posted by: かどぅ | January 13, 2005 at 02:12 PM

はじめまして。名古屋記事のコメントありがとうございました。

さて、私もうつ病10年やってます。理由は「人見知り」。一人っ子なんで団体行動を強いられると激しく心が抵抗するのです。ですから、薬は切らしたことがありません。会社も辞めたくて仕方ありません。
それでも最近は死にたい願望が消えたおかげでだいぶ気が楽になりました。まあいいか。。の心境くらいで丁度良いようで。

Posted by: シロネコ | January 16, 2005 at 09:46 PM

◆シロネコ様

わたくしも一人っ子なので、お気持ちよく察します。外界との距離感のとり方が難しいな、と戸惑う毎日です・・・。
やはり、「頑張る」のは過剰に強いないほうがいいのでしょうね、シロネコさんのお言葉を借りれば「まあいいか」という感じでしょうか。。

今後ともよろしくお願いいたします!

Posted by: かどぅ | January 17, 2005 at 01:44 PM

いま気がついたのですが「なまけ」に応援いただきましてありがとうございました m(__)m
相変わらずわたしはうちのご主人様にすっかりこき使われるばかりの毎日であります。なにせ仕事始めはマックスの治療だったし。。。(笑)
それから、横レスで申し訳ないのですが。。。
↑ 上の会話に反応しております! 何を隠そうワタクシも一人っ子でございまして、団体行動は本当に辛いです(汗) でもイマドキの子供を見てると一人っ子は珍しくもないようですし、これからはどんな世の中になるのか?興味津々だったりもいたします~ ^_^;

Posted by: たま | January 18, 2005 at 01:10 PM

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