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August 08, 2004

模範解答と別解

中学時代は今までの人生の中でも激動期であった。

ひとつ前のブログで、小学生時分から『スポーツなんて糞食らえ』と思ってたことに触れたが、実は中学3年間はテニス部に所属していた。野球やサッカー、ましてや武道なんかやった日にゃ、まず体力の無い僕はついていけないと思っていたが、軟弱そうなテニスならば何とかやっていける気がしていた。少しは体力を付けないといかん、という意識で、友人にそそのかされるまま入部届にサインをした。

・・・が、甘かった。テニスやるにも基礎体力なんだね。

とりわけ、スポーツ音痴だったボクは、相当に鍛えられた。九州という土地柄のせいか、教師は平気で怒鳴る、殴る、蹴る(今だと体罰だよなあ・・・)も行使した。ま、人生、こんなスパルタの時期があっても悪くないと思った。
顧問兼ぼくらのクラス担任だった教師は、その春大学を出たての新任だったこともあり、「熱血」への憧れがそういう行動を取らせたこともあったのだろう。その熱血っぷりを苦々しく思う部員も少なからず居たが、変に余裕ぶった教師よりも等身大で人間臭い感じがして、ボクは嫌いじゃなかった。

そんな僕らテニス部は、ある大会の試合で全員、ボロ負けした。

誰よりもこの試合結果を苦々しく思ったのは、ほかでもない熱血教師だった。重苦しい空気の中、僕らはみな部室に集められた。教師は怒り心頭に達していた。全員一列に整列させられた。

やおら、一番右に立っていた同級生に向かって、怒号一発。
「正直に言え。お前、何のためにテニスやってるんだァ!!?」
一番右の生徒は答えた。「勝つためです!」

「お前は、何のためにテニスやってるんだァ!!?」
右から二番目の生徒も答えた。「勝ちたいからです!」

「お前は?」「勝ちたいからです!」

無限ループにも近い繰り返しを経て、僕の番が廻ってきた。
「お前は、何のためにテニスやってるんだァ!!!?」
「・・・あの・・・健康維持のため・・・」

沈黙が流れた。
なんでだろう?ボクはどうも、緊張感が高まるとそれを崩したくなる嫌らしい性癖がある。「正直に」って教師は言ったのだが、どうやら彼の期待した模範解答とはひと味、違ったらしい。
プリミティブな集団にとって重要なことはモラールを維持することと、同質性を担保することだ。僕みたいな異端者は教師も扱いに困るのだろう。後日、職員室に呼び出されたボクは「君も生徒会が忙しいだろうから、大変なときは部活に顔出さなくても大丈夫だからね、な・・・」

僕は婉曲的にクビ、戦力外通告をされた。中学生にして。(爆)

しかし、折しも生徒会活動が忙しくなっていた僕にとっては、渡りに船の提案だった。教師は御しにくい生徒を抱える手間が省け、ボクは二足のわらじの多忙さが少しなりとも緩和される。Win-winの関係って奴だ。もちろん、ボクは生徒会活動を選んだ。ま、テニス部に籍は置いてたけどね。

中学卒業から10年目の同窓会。久しぶりにあった先生は相変わらずの熱血ぶりの中にも、様々な煩悶や葛藤を乗り越えた逞しさがあった。先生はこう言った。
「あのときの事はいまも忘れない。お前に会ったお陰で教師人生がだいぶ変わったし、俺も目覚めたよ。無理強いして右を向かせるだけが教育じゃないってことなんだなあ。」と。この10年の間に何が有ったのかは解らないが、とにかく、先生は明らかに変わった。

*****

生徒にとって理想の教師像があるように、教師にとっても理想の生徒像ってのはあるのだろう。しかし一方で、子供というものは親や教師の期待値に対して敏感な存在だ。

『こう答えれば、オトナは○をくれる』
子供は本能で模範解答を察知する。オトナに誉められるのはそれなりに快感なことだ。じっさいのところ僕も、「こういうものを書けば大人は喜ぶ」というような文章を書いては人に誉められていた時代もあった。それ自体はさほど難しいスキルではない。
けど、それは長い目で見れば子供をスポイルすることになる。模範解答に応えさせ続ける訓練は、自由で伸びやかで多様なはずの感性を奪い、中庸で無難な結論を選び取らせるだけの無批判な大人に近づけてしまう。しかし現代は、そういうオトナがラクにサバイバルできるような時代ではない。無思想と無批判のベールは今の時代を覆っているが、それが十年、二十年の間に、じりじりと社会から生命力のようなものを奪っているようにも思う。
まず以って、オトナの世界では模範解答なんて無い。無いからこそ、苦悩と苦痛にまみれ、試行錯誤と蛇行を繰り返しながら、解に少しでも近いものを見出そうと努力するんだ。そして、苦悩の末に結実した解は、本や雑誌に載っている模範解答なんかよりもずっと思い入れが深いものになる。

僕が今でも、「サラリーマンが読む××」とか「5分で変わる××術」のような本を敬遠するのは、模範解答への強い嫌悪が根底にあるからかも知れない。まあ勿論、ときには模範解答に沿ってヒトを喜ばせるのも悪くはないことだけどね。

・・・三つ子の魂百まで、ってか。

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Comments

読後、めちゃめちゃ爽快感!でございました。
前半のつかみだけでなく、10年後の先生のお話があるあたりが
まるで出来過ぎのようで、でもきっと事実はフィクションより
おもしろいことが多いんだよなぁ、と納得させられます。

これまでの日本「スポーツ」には、単に「身体を動かして楽しもう!」以上の精神論がべったりと張り付いていることが多いように感じますが、最近のスポーツ選手を見ていると、すでにみんなきっとそんな地平はとっくに超えているようにも見受けられます。でもきっと、身体はぼろぼろになって大変だろうなぁといらん心配などしてしまいます。
もうすぐオリンピック。
スポーツネタが似つかわしい時期ですね。

ちなみにわたし自身は、身体を動かすのは嫌いではありませんでしたが、いわゆる「熱血スポーツ」は嫌いでした。
大きくなって、自分のペースで出来るものを好んでたしなむことようになってからはシアワセにのんびりと動いています。

出来合いの模範解答なんぞいらん!!!
こころから賛成の意を表明したいと思います。
長くなりましてスミマセン。それでは、また。

Posted by: たま | August 09, 2004 at 12:59 AM

わたしは以外にも「模範解答」をする生徒でした。
「こんなもんでいいんでしょ?」って態度でね。
今思えばなんてかわいくない生徒でしょう。
生活態度は悪いけど、テストの点数だけはいい。
態度が悪いってことで、成績はテストの点に比べたらかなり原点されてましたけど。

そんなわたしも社会に出て10年以上。
模範解答ってなに? って人になってきました。
社会に出ると、先生のような画一的な人が少ないっていうのもあるのかもしれない。
会社にはホントにいろんな人がいます。
そのいろんな人の求める「模範解答」を考えることが面倒くさくなっちゃったんですよね。

おかげで今のわたしがいます。
どっちが好きっていうと、今の自分の方が好きかな。
病気はさておきね。

Posted by: akari | August 09, 2004 at 10:26 AM

>たま様
コメントありがとうございます!たいへん光栄に存じます!
先生曰く、新任教師の10年はアッという間だったようで。中学で言えば、中1→中3の担任を3サイクルは廻したというらしいです。ちなみに同窓会は5年前のことなので、今だと5サイクル分は廻しているのでしょうか・・・。

たまさんの仰るように、学校スポーツは相変わらず精神論なのか解りませんが、最近のプロスポーツは「楽しまなきゃ」的な要素が昔に比べて多くなってきたような気がします。
欧州のサッカー選手や米国のメジャー野球選手なんかが、楽しげにトレーニングやファンサービスする姿ばかりが目に映っているからかも知れませんが。(舞台裏はともかくとして)

遅れてきたスポーツへの関心が、最近のスポーツ関係のブログに反映されているようです。お恥ずかしながら。

また是非、お立ち寄りくださいませ!

Posted by: かどぅ | August 09, 2004 at 11:03 AM

>akari様
かどぅと申します。
コメントありがとうございます!

学校という場は壮大な実験場で、僕らにミニ社会での「模範解答」を強いるような場所なのかな、と思ったりもします。作文なんかでほとんどの場合、ポジティブな文章が好まれるのもそうだし、ビルディングス・ロマン(成長物語)を素材に扱うことが多いのもそうかも知れません。勿論、成長の過程では必要なプロセスだと思いますが。。

先生自身が画一的かどうかは解りませんが、同じようなキャリアパス(大体は教育学部・教育大卒)を経て、同じ学校の校風に塗れれば、自然と同質性は高くなるでしょうからね。
実は会社組織であっても同質性を後天的に植えつける場という点で、構造は同じなんですけどね。

でも何より、今の自分が好き、と言えることが一番。病気だって何だって構わないじゃないすか。

コンサルタントみたいで恐縮ですが、「答えは自分の中にある」というのは、ひとつの真理(用意された言い訳?)ですので。

Posted by: かどぅ | August 09, 2004 at 11:16 AM

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