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August 21, 2004

喧嘩売りの技術(若造編)

井筒監督の映画批評見たさに、金曜日はテレ朝「虎の門」をひたすら待つ。
今回は、話題のマイケル・ムーア監督「華氏911」。井筒評は、ムーア監督の枝葉末節なまでのブッシュ叩きと、ドキュメンタリーとしての完成度が必ずしも高くないという点で酷評していた。「ブッシュが反論しないわけが解った。この程度のレベル(枝葉を取り上げて、大声であげつらう手法)のものに、ムキになる必要がないからだ」とも。ボク自身は、実はまだ華氏911を見ていないのだが、井筒評からのみ推測される部分がある。それは、

『マイケル・ムーアの喧嘩の売り方は正しい』

ということだ。以下、ボクの持論と経験則を交えて考えてみたい。(傍らのTVではまだ、井筒監督が文句を続けているが、それはさておき・・・)

正しい喧嘩の売り方と、間違った売り方がある。ボクの定義では、「相手の力量を測った上で、自分の事後のプレゼンスを上げる効果がある喧嘩かどうか」が、正しいか否かの基準となる。ここでは、ジハード(聖戦)だとか、大義があるか無いかなんてことはどうだっていい。
労多くして果実の少ない喧嘩は、泥沼型。双方変わらぬ程度の体力で、血で血を洗う争いになったが最後、周囲の関係する人物を巻き込んで、政治的にも美学としてもよろしくない構図を作り上げてしまうもの。米ソ対立なんて、この典型だったかも。あの場合、“Hot war”にならなかったのがせめてもの救いだった。

・・・さて、では正しい喧嘩の売り方とは?

ボクが入社1年目だか2年目のペーペー時代にそれは起きた。そこそこの存在感があったいち同期が、やってくれたのだ。
彼はこともあろうに、当時会社のNo.3であった取締役に食って掛かった。その取締役の日常行動に関わる部分を、アンオフィシャルな場所で、社会人的なモラルに即した正論で批判した。ボクはその現場に居合わせたわけではないが、少なからぬ者がそのとき、「彼はこのまま無事では済まされないぞ」と思ったらしい。生殺与奪権を握る役員のこと、一介のペーペー社員をクビにするくらいは造作もない。(ま、実際はそう簡単ではないけど)
大方の期待に反して、彼は何のお咎めも無かった。どころか、その直後から、彼は同期連中の中でも一目置かれるようになった。「あんな風に役員に対して食ってかかれるなんて凄い。大したもの(狂気?)だ」と。

ボクは最初から、全く違う見方をしていた。
そして、別な意味で彼に感心していた。それは、「こいつは喧嘩の売り方を知っている。中々にリアル・ポリティックスを解ってる奴だ」という点で。
中間管理職ならともかく、若造がいくら吼えようと、それを真面目に取り合うトップなど普通は居ない。真面目に取り合った瞬間、器の小ささが露呈してしまうので、体面上取り合うこともできない。トップはそういうジレンマを持つ。また器量の大きなトップであれば、彼の名前を記憶に留め、その気概をプラス評価に転じさせることだってある。
一方、若造にとって喧嘩を売ることが持つメリットは大きい。極めてリスクの少ない相手に対して、喧嘩を売った実績を残すだけでなく、手っ取り早く名をあげることまでできる。相手の不戦敗は目に見えている。うまくいけば、周囲の者からの賞賛まで得られるというオマケ付きだ。

同世代や2・3年次程度上の者に売った喧嘩だったら、こう簡単に事は運ばなかったのではないだろうか、とも思う。現在、彼は6割以上辞めてしまった会社の中で未だ生き残り(ちなみにボクもとっくに辞職済)、同期よりも早いスピードで出世の階段を突き進んでいる。みんなして、彼の「ポーズ」にやられてしまったわけだ。

冒頭でマイケル・ムーアの喧嘩の売り方の正しさ、を述べたのはこういう観点から。
おそらく正面から真面目には取り合わないであろうブッシュ大統領を、小さいところから丹念に調べ上げて叩いた。そのことで、映画としての話題性と、監督としての知名、そして、タブーに挑戦したという侠気と、周囲からの賞賛などなど、、、ムーアは全てを手に入れた。なかなかにポリティックスを解ってる行動だ。

ボクが喧嘩の売り方に技術があることに気付いたのは、20代も後半になってからであった。ちとばかし遅い。
少なくとも、喧嘩売りの上手な中年には成りたいものだ。

※追記※
そういえば、ライブドアの堀江社長もナベツネさんに喧嘩、というか噛み付いてましたよね。
「新旧対決」という感じの世代闘争論に持っていったのも上手なやり方だし、水面下の動きはわかりませんが、案の定、ナベツネは「そんな若造は知らん」と相手にしないそぶりを見せました。結果、ホリエモンは企業株価も評判株価も上がったわけで。

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Comments

こんにちわ、初めて投稿します。

昨日私もこれ見てました。
なるほどこういう考察もあるんですね。
江戸っ子のような啖呵を切るってカッコいいですんもんね。

いわゆる「床屋政談的政治論」と「リアル・ポリティックス」の違いですかね。

Posted by: mikio | August 21, 2004 at 10:20 AM

mikio様、コメントありがとうございます!
たいへん光栄でございます。

mikioさんご指摘の「床屋政談」も日本の古くからある政治を議論する様式で、これはこれで「アテネの民主政」あたりと全く趣の違うところが面白いですよね。
僕もそうなのですが、大体にして評論型の人はリアルポリティックスが下手くそだったりします。政治学者が政治家になっても上手く実力を出せないことも多いし・・・。

そういう意味では、「喧嘩屋」というカテゴリはまた別にあって、政治的な知識云々は別において、上手に喧嘩を売る技術ってえのがあるのかも知れませんね。

また是非、お越しくださいませ!

Posted by: かどぅ | August 21, 2004 at 12:58 PM

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目が覚めて、頭痛も治り、威勢よく一発もの申す!! 華氏911(公式ページ)の日本での全国公開が始まった。 内容はご存知のように、アメリカのブッシュ政... [Read More]

Tracked on August 21, 2004 at 02:42 PM

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