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July 16, 2004

祭りの輪の外で

通常でも、博多・天神は賑わいで溢れかえる街だが、7月になると尚一層凄い。
それもこれも、博多祇園山笠のせいだ。

山笠は例年、7月1日から15日がお祭り期間であり、15日早朝の櫛田神社入りの行事「追い山」でフィナーレを迎える。
「オイサッ、オイサーッ」という勇壮な掛け声とともに、明け方4時59分、一番山が入るとあたりは歓声と喝采、熱気に沸く。

・・・そこに、十年前の僕も、居た。

博多の予備校寮は大学生チューターが常駐し、門限や点呼も厳しかったが、夜中に僕は部屋を抜け出し、山笠へと向かった。浪人も二年目になると、それなりに神経が図太くなるものだ。
同じく博多で、安アパートを借りて独り暮らししていた友人が居た。中学時分の同級生で、成績が良く、何よりも、ガッツとポリシーのある奴だった。Nくんと合流したのは、追い山の日の深夜だ。

Nくんは現役で東京の大学に合格していたが、大学2年で中退。医学部を目指して再度受験をしようと、博多で独り暮らしを始めていた。梅雨のあとさきの頃、彼を偶然予備校のロビーで見掛け、それ以来僕らは意気投合するようになった。

彼とは、いろんなことを語ったが、中でも一番印象に残っているのは、「どうして自分のことなのに、一生懸命になれないんだ?成績は抜群なのに、おかしいよ。もっと、自分のために頑張らなきゃいけない瞬間があるだろ?」と言われたことだった。
二浪もしている身にとって、全国で1番取ろうが2番取ろうが、決して自慢なんかにゃならない。むしろダサい。が、当時の僕はそれでも、そこそこの下手な満足感を得てしまっていた。予備校でトップという井の中の蛙はそれなりに悪くなく、寮生活をしていたこともあり、おなじ寮生で成績の良くない奴なんかに勉強を教えたりもしていた。今にして考えれば、何を勘違いしてたんだ?自分・・・。

彼には、「大学ってどんなところ?」とよく聞いていた。
東京の大学で彼はいろんなサークルに所属し、最初の数ヶ月は大学生活をそれなりに謳歌していたが、ちゃらちゃらした雰囲気ややりたいことが見つからないという不満から、嫌になっていった経緯があるようだった。ただ、大学を知らない当時の僕にしてみれば、彼の口から出る大学はまるで毎日がお祭りのようにも思われた。Nくんのように幻滅するのかも知れないが、それにしても、入って見なければその値打ちが解らないだろう、と。
櫛田神社に着くまでに、僕らは飲み切った缶ビールを片手によしなし話した。

神社は早朝4時59分に近づくにつれ、心地よげな緊張感に包まれる。

瞬間、勇壮な1番神輿の連中が境内に突入。
雑念も煩悶も不安も何もかもを吹き飛ばす男の神輿は、櫛田神社をくるりと回って、そのまま表の街へと走り去っていく。神輿のタイムレースだ。ほんとに、閃光のように一瞬のできごとだった。
興奮は一気に弛緩へと導かれ、ふと見た東の空の白さは、忘れられない白さとなった。

祭りはやはり、眺めるよりも、演じるほうに居たいものだと思う。

暑い夏が過ぎ、受験が佳境に入るにつれ、Nくんとは連絡が取れなくなった。
あれから十年。風の噂では、僻地で医療に従事しているという。

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Comments

はじめまして北海道の惑といいます。博多祇園山笠のNHKの生中継再放送見て感動しました。検索でたどりつきトラックバックさせてもらいました。簡単ですがLINK紹介もさせてもらいました。よろしくです。

Posted by: | July 24, 2004 at 05:53 AM

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