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July 12, 2004

ビジネスは思想領域への侵食を止めよ

いつからだろう、書店の棚先で「成功するビジネスマンのマキャベリ交際術」だとか「クラウゼヴィッツの戦略思考」「アリストテレスがGMを経営したら」なんて本が並び、そこそこのベストセラーになってきたのは。

有史以来、人間は自然界のあらゆる動物の中でピラミッドの頂点に立ち、下位のピラミッドのあらゆる生態系を破壊し、好き勝手にやってきた。そのツケを払うためなのか、人間はいま再び「環境保護」「生態系保護」などと申し訳程度に唱えるようになった。
いくら力があるからといって、簡単に侵食してはいけない領域がある。

さて、ホッブズは権力国家の構造的に暴力的なありようを、旧約聖書上のモンスター「リヴァイアサン」になぞらえたが、僕には、いまのビジネスの猛威はまさに「リヴァイアサン」、悪し様に言えばある種の疫病みたいなもんだと思う。ビジネスは貪欲な怪獣である。経営学じたいは成立から100年程度の日の浅い学問なのだが、自分の畑の果実を食うには飽き足らず、他の学問を侵食することすること。冒頭で述べたクラウゼビッツ、アリストテレスなどはその好例だが、放っておくとあらゆる学問領域への食指を伸ばしかねない、そんな恐怖を感じざるを得ない。
ビジネスの病の怖いところは、あらゆる可視的・不可視的なものをビジネスというフィルターを通じて見ようとするところ。業務に、出世に、明日の銭儲けに、役に立つかどうかという解り易すぎる判断基準。そして、疫病にかかると自分も同じフィルターで世の事物を見始めてしまうからこれまた怖い。

こう書いていて自分自身、ケツの穴の小さい、了見の狭いことを言ってるのかな、とも思う。ビジネスの勢いを借りて、思想や文学や歴史学だといった学問が息を吹き返すのは逆に望ましいことではないか、と。でもね、その畑だって、清貧に甘んじて糞真面目に学問を積み重ねている学者が世の中には居るですよ。僕は政治思想を学んだこともあって、特にその気持ちが強いが、まあ、儲からない学問もあるわけですよ。日がな一日、「善について」「自由について」「共生について」「民主主義について」「暴力について」・・・こんなことを頑なに考え続け、車検の切れてそうなボロい車に乗り続け、袖口の擦り切れたスーツを着ている先生を知っている。
真面目に愚直に、累々と耕し続ける学者の畑に、何の権利があって土足で踏みにじれますか?一時の疫病が去っていったあとのことを考えたことはありますか?乱獲された後はさぞ無残じゃないんですか?

裏を返せば、ビジネスは権威や伝統性が欲しくてしょうがない領域なのである。経営学じたいは100年程度の学問だから、権威と言っても知れている。だから、「マキャベリ」だ「ジョン・ロック」だ「アリストテレス」だの思想世界のビッグネームを持ってきて、ハクをつけようとする。なんだか、いじましい。

ここでこれだけ憂いてみても、時の勢いは変わらないだろう。ビジネスはこれからも思想領域を侵食し続け、際限ない乱獲を繰り返すに違いない。でも、ここで偏屈者がひとりくらい、ビジネスの側の人間として居てもいいかな、なんて思って書いてみました。。

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Comments

思想がビジネス領域を侵食してもええんでないかな。

Posted by: みない | July 14, 2004 at 02:44 AM

みないさん、コメントありがとうございます!

思想がビジネス領域を侵食する、のは面白いかもですね。
身内贔屓・判官贔屓の一種なのかも知れませんが、昨今の
ビジネス領域は、不断の侵食活動を繰り返しています。

昔は、思想が無くては、ヒトは生きていけないはず、
と思ってましたが、無思想のベールはますます広がりを
見せているように、勝手ながら感じております。

思想を知るひとがさらに現実ビジネスの世界で成功する、
こんな日が来ると面白いんですけどね・・・。

また是非、お立ち寄りください。

Posted by: かどぅ | July 15, 2004 at 09:59 PM

↑「思想がビジネスに侵食」か~。
なかなかいい考えですね。

現状としては、まっとうに思考するならば
「考えてもわからない」「知らないことがたくさんある」
なんてことはあたりまえのはずなのに、
そんな状態を嫌う、そんな状態に耐えられない人が増えていて、
そうした人たちに向けて、難しいことにもっともらしい明快な説明をつけて売りさばく、
そんな商売をしている人たちが多いように感じます。
個人的には、そうやって売ってる内容なぞよりも、
そうやって売り出す仕掛けの方に興味がわきますね。。。

Posted by: たま | July 25, 2004 at 10:54 PM

たま様、コメントありがとうございます!

テレビの視聴者コメントなんかを見てても顕著なのですが、「解りやすいこと=よいこと」、「難しいこと=わるいこと」というのが、世間では結構、物事の好悪の有力な尺度になっているようです。政治家なんかに対するコメントがそうですよね。。

けど、だからこそ、たまさんの仰るとおり、難しいことをもっともらしく言って儲ける商売が成り立つのかなあ、、なんて思います。
その上で、その仕掛け自体に興味が湧く、と仰るたまさんは、さすが、酸いも甘いも噛み分けた感じですね・・・。

m(_ _)m <僭越ながら

Posted by: かどぅ | July 28, 2004 at 01:48 AM

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